ある所で、音楽の効果をテーマに
短い発表を行ないました。
その原稿の一部を紹介します。
音楽は、芸術の代表的な一分野です。そこで、まず芸術とは何かを考えてみたいと思います。
辞書等で「芸術」を検索してみると「他人と分かち合えるような美的な物体、環境、経験をつくりだす人間の創造活動、あるいはその成果をいう。」「美を追求・表現しようとする人間の活動。およびその所産。」といった定義が見出されます。確かにその通りなのですが、もう少し踏み込んでみたいと思います。
芸術の特性を考えてみましょう。芸術作品は、個性的であると同時に普遍性を有しています。また、自由でありながら秩序に従っています。そして、時間的な存在でありながら永遠(時間と対立する意味での)に属しています。どのような種類の芸術作品であっても、すぐれた作品はすべて、以上の特性を有しているはずです。
ところで、芸術のこれらの特性は、芸術以外のある物の特性と完全に一致します。それが何かおわかりでしょうか? …そう、「生命」です。この一致から、芸術のより正確な定義が導き出されると思います。つまり、「芸術とは、生命の純化された表現、あるいは、生命の様態の表出である。」と言えるのではないでしょうか。そうであるからこそ、我々は、芸術作品に触れる時、魂の底から揺さぶられるような感動に見舞われ、心の浄化と生命力の充溢を感じるのです。
少し話は飛びますが、民俗学・文化人類学において取り上げられる、「ハレ」と「ケ」という概念があります。「ケ」というのは日常のこと、「ハレ」というのは特別な日、つまり、盆や正月、節句や祭りなどのことです。現代では「ケ」はほとんど使われませんが、「ハレ」は、いわゆる「ハレの日」というような言い方で使われています。
ケ(日常)を続けていくうちに、人間は必ず、マンネリに陥り、モチベーションは次第に低下していきます。そこで、ハレの日に、スカッとリフレッシュし、また、新鮮な気分でケに戻っていくわけです。
この、ハレの日のリフレッシュ効果は、何も年に数回の特別な日だけにあるのではありません。たとえば、日曜日や祝日。これは立派な「ハレの日」です。また、1日の仕事の中にも、昼休みや休憩時間といった、「ハレの時間」的なものがあります。つまり、短いスパンの中でも、効果的にリフレッシュを行なうことにより、日常生活は、より新鮮で魅力的なものとすることができるのです。
このハレの効果は何によってもたらされるのでしょうか? 休息もそのひとつでしょう。単にしばしケから離れることだけでも、リフレッシュ効果は期待できそうです。しかし、真のリフレッシュはもっと積極的な活動によってこそもたらされるのだと思います。
たとえば、スポーツ。これは、いちいち解説を行なうまでもなく、誰でもがその素晴らしいリフレッシュ効果を体感したことがあるはずです。見るにつけ、行なうにつけ。
そして、芸術です。これもまた、鑑賞するにつけ、行なうにつけ、劇的なリフレッシュ効果をもたらしてくれます。
日本に限らず、古来より、ハレの日によく行なわれてきたのが、演劇や音楽などでした。人間は、芸術の持つ強大なパワーを大いに利用してきたのです。
ここで、本題に戻ってきました。私たちの行なっている日常の仕事等がどんなに気高く有意義なものであっても、それを続けていくうちに、前述のように、次第にモチベーション等は低下していきます。そこに、意識的にハレの日なり時間なりを効果的に挿入することにより、日常の作業をマンネリから救出することができるのです。
そのための手段として、音楽は最も手軽で、最も効果的なもののひとつです。聴いて楽しむ。また、気軽に参加もできる。そして、気持の表層部だけではなく、心の底に潜む生命の本質から湧き上がるパワーによってリフレッシュされるのです。
ただし、ひとつ忘れてはならないのは、誰もが音楽大好きというわけではないということです。また、音楽好きであっても、好みは様々です。ぼくも音楽は大好きですが、聞くに堪えない曲も結構あります。無理強いは禁物です。
おわり
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